今からちょうど10年前。ドイツW杯が盛り上がりをみせた2006年、フィヒテンブルグにあるKW本社に7ポストリグが導入され、KWは同システムを有するドイツで唯一のサスペンションメーカーとなりました。
7ポストリグ設置にW杯のような盛り上がりがあったかは別として、KWのエンジニアたちはその後のR&D部門の発展に心躍らせたのではないでしょうか。
導入当初こそその扱いに手を焼いたそうですが、今では自社製品の開発のみならず、KWとパートナーシップを結ぶ名だたるモータースポーツチームやチューナー、そしてOEM供給している自動車メーカーなどとの研究・開発にも使用されています。
さて、実際その7ポストリグって何なの?ということですが、(タイトルにもなっている通り)端的に言うと実際の走行状況を作り出す高次元シミュレーションシステムです。F-1チームで使用されるシミュレーターとして有名ですね。
車輪下部に設置される4本のメイン油圧アクチュエーターで接地性をシミュレーションし(上下に振動します)、残りの3本の油圧アクチュエーターで車体に掛かるロールやダウンフォースなど作り出します。
これにより、あらゆる走行状況を忠実に再現したシミュレーションが可能になり、精度の高い膨大な情報を収集することができます。基本的な開発には4ポストモジュール(メイン油圧アクチュエーター)、必要に応じて7ポストモジュールが使用され、この7方向から負荷を掛けることであらゆるサーキット走行までもを正確に再現するわけです。
実際にマシンを走らせてデータ収集するコストや時間が大幅削減できるだきるだけではなく、天候に左右されない、さらにはテスト走行によるクラッシュのリスクも無いこのシミュレーターは多くのモータースポーツチームに使用されています。
何を隠そう、もはや伝説的なチームと称される“マンタイ・レーシング” の911 GT3Rのデータ収集や開発にも活躍しているのです。
あの世界一過酷なレースとも謳われるNürburgring24時間レースを5度制した超名門チームの足元を支えたのもKWであり、この7ポストリグなのです。
同システムを使用したマンタイ・レーシングが、Nür24やWTCCなどで好成績を収めていることをとっても卓越した装置であることが証明されています。
KW社が行う新製品の開発や車種ごとの最適なセットアップには、これらレースカテゴリにおける豊富な経験や技術のフィードバックとともに、この7ポストリグが最大限に駆使されています。
このシステムを用いたモノづくりがKW製品の強みであり、高い評価を受けるひとつの理由なのです。